飛行機は定刻通りに奄美上空にさしかかった。
奄美上空、雲が厚い。それに、低い。
いつもなら、雲をくぐってその下に飛行場が見えるのに、島全体が、もっこりとした白い雲に覆われていて一分の隙も見せようとしない。
飛行機は、大きく何度も旋回し、進入路を見つけようとしていた。
アナウンスが入り、今回無理なら、鹿児島もしくは福岡に向かうという。
どうなるんだろう。
アナウンスのあとも、何度かトライされ、飛行機の高度がぐぐっと下がった。
低くかかった雲を押しのけるかのように、飛行機は滑走路に滑り込んだ。
ロシアの霧の深かった飛行場を思い出すくらい、今日の奄美は雨雲に覆われている。
かといって雨が降る感じではなくて、少し不思議な情景だった。
今日はなんと、空港に友達が迎えに来てくれている。こんなことは滅多にないので、とても嬉しい。
その友達と、またなんというか、浜に行くことになった。友達のお母さんが、イショに行くというので、便乗させてもらったのだ。
今の季節はキビナゴが寄ってきているのだという。
浜に降りると、潮が引き始めていた。
リーフを歩く、何年ぶり?歩くときに聞こえる、いろんな音がすき。
貝が蓋を閉める音、水の流れる音、波の音。いろんな音に包まれてリーフを歩いた。
泳ぐキビナゴを見るのは初めて。白い群れがあったが、キビナゴは蒼いのだという。
ウチらには無理かなぁと、お母さんたちの後ろを歩いていたが、キビナゴは私たちにもその姿を見せてくれた。
キレイ、キレイ。
追いかけて捕まえる。嬉しくもあり、ちょっと気がとがめもして、少しだけ楽しんでやめた。
泳ぐ姿いい。
傷ついたキビナゴは、クモヒトデに絡まれていた。
自然の営みがそこにはあった。
イショの帰り、リーフにはルリカケスの姿もあった。彼もまた、イショをしているようだった。
今、自宅に戻り、湯上がりにネットに向かっている。
市内でありながら、蛙の声、虫の声、いろんな音が夕暮れを教えてくれる。
この時間、奄美は、まだ明るい。